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雨。

いまより10歳は若いころ。
明日死んでしまってもかまわない。
そう思ったことがありました。

大海を知らないが故に疑問もなく生涯を全うする、
いま考えるとそれはあの蛙のようでした。


仕事が明け方近くまでかかったその日は町内のゴミの日で、
まだ暗い中、ご近所を気にしながらゴミを持って歩いていました。

白んでくるにはまだ少し早い時間です。
雨。_a0050955_7501170.jpg激しい雨がアスファルトを叩いています。
意外と景色が目に映るのは、
雨雲が薄い光を集めては、
辺りをまんべんなく照らしてくれているからでしょうか。

朝の改札へ続く階段で、
何万回と振り下ろされる人々の足のように、
いささか暴力的なまでの勢いで雨は打ち続けています。



色はありません。
墨で描いた世界に入り込んだような、不思議な感覚です。


公園を隔てた家の防風林が、まるで森のようにみえます。


目を奪われました。

モノクロのその森は、
叩きつける雨のすべてを受けとめようとでもするかのように、
めいいっぱいに両手を広げています。
雨。_a0050955_844050.jpg新しい分裂が始まっています。
細胞が活発に動きまわっているのを感じます。


ぼくがそこに見たものは、
優しく、力強い、瑞々しい生命の誕生の瞬間でした。

神聖な、そして神秘の時間に遭遇したようです。




あぁ、生きたいな。

そう思っている自分がいます。


世界は、こちらがこころを開いて初めて、
ぼくらを受け入れてくれるものなのでしょう。


あきらめず、
さめることなく いきましょう。
by nowhere-else | 2008-07-21 08:18 | いろんなこと
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